中国メディアの現場は何を伝えようとしているか: 女性キャスターの苦悩と挑戦

中国メディアの現場は何を伝えようとしているか: 女性キャスターの苦悩と挑戦

  • 作者: 柴静,鈴木将久,河村昌子,杉村安幾子
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2014/04/26
  • メディア: 単行本
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内容

主にニュースの現場で活躍し、中国中央テレビ局の人気アナウンサー、柴静(チャイ・ジン)。彼女がニュースの現場でなにを考え、どんな行動をしたかということが記されている。本書は、社会問題の記録でもあり、ひとりのアナウンサーとしての成長の記録でもある。

感想

フジテレビの加藤綾子さんは飲み会に行っても、じぶんの意見をほとんどいわないという。それは男性を立てるとか、聞き上手とかではなく、職業柄だかららしい。そんなことをほんまでっかTVでいっていた。

いまでこそ、女子アナと略されるように、バラエティで多くの女性アナウンサーが活躍している。だが、彼女たちの本業は、ニュースを伝えることだ。ニュースを伝えるときに、大切なことはじぶんの主観をいれないこと、現場で起こったことをそのまま伝えること、それがアナウンサーの役割である。だから、加藤さんは飲み会に行っても、じぶんの意見をいわないのだ。

ということは、彼女たちのようなアナウンサーが現場に行って、そこでなにを感じ、どんなことを考えていたのか、ということがあまり表にでてこない。だが、本書はそれが手にとるようにわかる内容となっている。

なぜなら、本書はメディアについて書かれた本でもなく、社会問題を伝える本でもなく、ひとりの女性アナウンサーが現場でなにを考え、どんな行動をとったのかという記録だからだ。

そういう意味では、以前よんだ黒柳徹子さんの「トットちゃんとトットちゃんたち」と似ている。こちらは、ユニセフ親善大使として毎年のように途上国を訪れ、その現場を黒柳さん自身の手によって書かれている本だ。

yukiumaoka.hatenablog.com

もちろん黒柳さんはアナウンサーでもないし、本書は中国で起こった問題やニュースを扱った内容なのだから、比較するのはすこしちがうのではないかという意見もあるだろう。だが、黒柳さんも柴静(チャイ・ジン)さんも現場に赴き、そこでなにを感じ、どのような行動をとったかという記録である点においては同質だろう。

ぼくは「トットちゃんとトットちゃん」たちより、本書のほうがすきだ。なぜなら、本書のほうが柴静さんの葛藤や苦悩が伝わってくるからだ。一方、「トットちゃんとトットちゃんたち」は、訪れた国の情報や社会問題についてはくわしく書かれているけれど、黒柳さん自身の思いなどの記述がすくなかった。レポートとしては、すごく出来ているが、読み物としてものたりない。

その点、本書は読み物としてたいへん優れている。アナウンサーとしてのじぶんの役割と人としてのあり方の間にゆれる柴静さんの姿は、人間味があり、よんでいておもしろい。

 

アナウンサーは、ニュースを伝えるうえで、じぶんの意見を言ってはいけない。しかし、ぼくたちはアナウンサーたちが現場でなにを考え、どのような行動をしたのかということを知ることも必要なのかもしれない。